個人サロンの帳簿の付け方|手書き・エクセルでも毎日書く欄は同じ
個人サロンの帳簿の付け方は「毎日書く欄」を先に決める
個人サロンの帳簿の付け方で迷うと、「手書きでいいのか」「エクセルか、アプリか」という道具の話から考え始めがちです。けれど先に決めるべきなのは、毎日どの欄に何を書くかです。欄さえ決まれば、ノートでもエクセルでも同じ中身になり、道具はあとから替えられます。
この記事でわかること
- 「帳簿」と呼ばれているものを、売上・経費・お金の出入りの3つに分ける考え方
- サロンの売上を1日1行で書ける欄と、カード売上・物販・回数券で迷うところ
- 手書き・エクセル・アプリの選び方と、毎日・毎週・毎月にやること
この記事は税務の一般的な情報をまとめたものです。控除の区分の選び方や、個別の取引をどう書くかは、ご自身の状況をふまえて税理士や税務署にご確認ください。
結論:3つの欄を決めて、売上は1日1行で書く
先に答えを出します。白色申告や青色申告の10万円控除で申告する個人サロンなら、帳簿の付け方は次の3点に整理できます。
- 帳簿を「売上」「経費」「お金の出入り」の3つに分ける
- 売上は「1日1行」で書ける欄を決め、その日のうちに書く
- 毎日・毎週・毎月で、やることを分ける
複式簿記(1つの取引を「借方」と「貸方」の2つの面から記録する正式な方法)が要るのは、青色申告の55万円・65万円の控除を狙う場合です。そこまで狙うなら会計ソフトを使うか税理士に任せる、という線引きで考えると迷いが減ります。
なぜ帳簿が続かないのか:欄が決まっていないから
帳簿が続かないのは、根気だけの問題ではありません。よくある原因の一つが、何をどこに書くかが日によって変わることです。
- ある日は施術と物販をまとめて合計だけ、別の日は分けて書いている
- カードで払われた売上を、お会計の日に書いたり、入金の日に書いたりしている
- レシートが財布・カバン・スマホの写真に散らばっている
こうなると、月末に見返しても数字がそろいません。結局、年明けに通帳とレシートを並べて1年分を作り直すことになります。逆に、欄が毎日同じなら、書く時間は1日数分で済みます。道具選びより先に欄を決める、が帳簿を続けるいちばんの近道です。
帳簿と呼ばれているものを3つに分ける
「帳簿をつけましょう」と言われても、何冊つければいいのか分かりにくいものです。個人サロンでは、まず次の3つに分けて考えます。
| 分け方 | 何を書くか | 国税庁の帳簿の名前でいうと |
|---|---|---|
| 売上の記録 | 毎日の売上(施術・物販など) | 売上帳 |
| 経費の記録 | 材料・家賃・広告などの支払い | 経費帳 |
| お金の出入り | レジの現金と、口座の入出金 | 現金出納帳・預金出納帳 |
国税庁の案内では、白色申告の人も記帳と帳簿・書類の保存が必要とされています。書くのは、取引の年月日、相手方の名称、金額、日々の売上・仕入れ・経費の金額などです(No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度、令和8年4月1日現在法令等)。
青色申告の10万円控除は、No.2070 青色申告制度で、現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳のような帳簿を備え付けた簡易な記帳でもよいとされています。55万円・65万円の控除は、No.2072 青色申告特別控除で「正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)」による記帳が要件です。65万円はさらに、e-Taxでの提出か、帳簿の電子保存の要件を満たすことが求められます(いずれも令和8年4月1日現在法令等)。
白色と青色のどちらにするか、届出の時期はいつかといった申告までの段取りは、個人サロンの確定申告は何から?売上と経費を今から整える手順にまとめています。この記事では、毎日の書き方に絞ります。
サロンの売上を「1日1行」で書く欄の決め方
売上の記録は、1日を1行にまとめると続けやすくなります。おすすめの欄は次のとおりです。
| 日付 | 施術の売上 | 物販の売上 | 現金 | カード | QR決済 | その日の合計 | メモ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10/1 | 38,500 | 4,400 | 12,100 | 22,000 | 8,800 | 42,900 | — |
| 10/2 | 27,500 | 0 | 27,500 | 0 | 0 | 27,500 | 回数券1件 |
欄の決め方は3つの手順で進めます。
- 売上の種類を横に並べる … 施術と物販は別々の欄にします。ほかに回数券や出張料などがあれば、欄を足します。
- 支払い方法ごとの欄を作る … 現金・カード・QR決済など、お店で受けている支払い方法の数だけ欄を作ります。
- 合計が2通りで一致するか確かめる … 「施術+物販」と「現金+カード+QR」の合計は、同じ金額になるはずです。ずれていれば、その日のうちに原因を探せます。
1件ずつ書くか、日々の合計で書くか
国税庁の白色申告の案内では、一つ一つの取引ごとではなく、日々の合計金額をまとめて書くなどの簡易な方法でもよいとされています(No.2080)。上の表のような1日1行の書き方は、この考え方に沿ったものです。
青色申告の人は、記帳の方法によって決まりが変わります。日々の合計で書いてよい範囲は、国税庁のパンフレット「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」で確かめるか、税務署に聞いておくと安心です。
お客様の名前やメニューは、帳簿とは分けて考える
「誰が・何のメニューを受けたか」は、リピートや客単価を見るための大切な記録です。ただ、税務の帳簿として毎日書く欄とは役割が違います。経営のために残しておきたい項目は、個人サロンの売上管理アプリは無料で始める?選び方を解説で整理しています。帳簿の欄に全部を詰め込むと、続かなくなります。
サロンで迷いやすい書き方3つ
1. カード・QRの売上は「お会計の日」に書く
カードやQR決済は、お客様が払った日と、口座にお金が入る日がずれます。一般的には、売上はお会計の日に、お客様が払った金額で書きます。入金はあとから、口座の記録と突き合わせます。
入金の額は、決済の手数料が引かれた金額です。入金額を売上にすると、売上が手数料の分だけ小さくなります。手数料は経費として別に記録するのが基本です。手数料率や入金日の見方は、サロンの支払い方法を現金・カード別に管理する|手数料と入金日の見方をご覧ください。
2. 施術と物販は、その日のうちに分けて書く
合計だけを書いておき、あとで施術と物販に分けようとしても、思い出すのは難しくなります。物販は仕入れ(経費)と対になる売上なので、分けておくと材料や商品の利益も見やすくなります。お会計のたびに、どちらの欄かを決めておきます。
3. 回数券・前払いは、扱いを決めてから書く
回数券や前払いを受け取った日の扱いには、受け取った日に売上にする考え方と、「前受金」(まだ施術をしていない分の預かり)として分けておく考え方があります。どちらで書くかは、事業の形や申告の方法によって変わります。
この記事ではどちらかに決めつけません。自分のお店でどう書くかは税理士に確認し、決めた書き方を毎回そろえることが大切です。考え方の違いは、整骨院の回数券は「前受金」|都度払いと分けて管理する方法にまとめています(美容サロンの回数券にも通じる内容です)。1日1行の表では、回数券を受け取った日にメモ欄へ印を付けておくと、あとで探せます。
手書き・エクセル・アプリはどう選ぶか
道具を選ぶ前に、一つ押さえておきたいことがあります。国税庁の案内が求めているのは、所得が正確に計算できるよう整然と、かつ明瞭に記帳することです(No.2080)。紙かパソコンかの指定は書かれていません。国税庁は帳簿の様式例も、印刷して書けるPDFとExcelの両方で公開しています(個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について)。つまり、手書きのノートでも帳簿として成り立ちます。
欄が同じなら、道具の違いは「合計を自分の手で出すか」「申告の時期に打ち直しが出るか」だけです。
| 手書き(ノート) | エクセル・スプレッドシート | アプリ・会計ソフト | |
|---|---|---|---|
| 始めやすさ | 今日から始められる | 表を一度作れば始められる | 初期設定に少し時間がかかる |
| 月の合計の出しやすさ | 電卓で自分で足す | 式を入れておけば自動 | 自動 |
| 申告の時期の手間 | 会計ソフトや申告書へ打ち直す | 合計を転記する。取り込める形にもできる | 申告書の作成まで進められるものもある |
| 向いている人 | お会計が1日数件・現金が中心 | パソコンに抵抗がない・支払い方法が多い | 青色55万・65万円を狙う・時間を買いたい |
道具は、欄が決まってから替えればいい
「ちゃんとした会計ソフトを入れてから始めよう」と考えると、そのまま数か月たってしまうことがあります。道具の操作を覚える前に、毎日書く欄を決めて、今日から1行書くほうが先です。
ノートで3か月続けた欄は、そのままエクセルの列になります。エクセルの列は、会計ソフトに取り込む項目とほぼ同じです。欄が同じなら、道具を替えても中身は引き継げます。最初の道具選びで悩みすぎないことが、結果としていちばんの近道になります。
なお、パソコンで作った帳簿や、メールで届いた明細・領収書の残し方には別の決まりがあります。個人サロンの電子帳簿保存法|メールで届く明細・領収書の残し方もあわせて確認しておきましょう。
毎日・毎週・毎月にやることを分ける
帳簿は、まとめてやるほど大変になります。やることを3つの間隔に分けておくと、1回あたりの作業は短く済みます。
- 毎日(閉店後5分)
- その日の売上を1行書く(施術・物販・支払い方法ごと)
- レジの現金を数えて、現金の欄と合っているか確かめる
- 毎週(15分)
- 財布やカバンのレシートを集め、経費の欄に書く
- レシートは月ごとの封筒やファイルにまとめる
- 毎月(30分)
- カード・QR決済の入金を口座の記録と突き合わせ、手数料を経費に書く
- 月の売上と経費の合計を出す
毎日の現金の確認で差が出たら、その日のうちに原因を探します。数日たつと、どのお会計でずれたのか分からなくなります。月の数字の見方は個人サロンの月末の振り返りのやり方|30分で終わる見る順番で、年末から申告までの段取りは先ほどの確定申告の記事で扱っています。
帳簿と書類を残しておく年数
国税庁の白色申告の案内(No.2080、令和8年4月1日現在法令等)では、保存の年数は次のとおりです。
| 保存が必要なもの | 保存期間 |
|---|---|
| 収入金額や必要経費を書いた帳簿(法定帳簿) | 7年 |
| 業務で作った上記以外の帳簿(任意帳簿) | 5年 |
| 決算に関して作った棚卸表などの書類 | 5年 |
| 請求書・納品書・送り状・領収書などの書類 | 5年 |
青色申告の人は、帳簿や書類を原則として7年間保存し、請求書・見積書・納品書・送り状などは5年間でよいとされています(No.2070)。売上の規模などによって年数が変わる書類もあるため、自分の区分は国税庁の案内で確かめてください。
よくある失敗とNG
- 通帳の入金額を、そのまま売上として書く … カード・QR決済の入金は手数料が引かれた額です。売上はお会計の日に、お客様が払った金額で書きます。
- 施術と物販を合計だけで書く … あとから分けるのは難しくなります。最初から別の欄にします。
- 私用の支払いを事業の口座やカードで混ぜる … どれが事業の経費か分からなくなります。できれば事業用の口座とカードを1つずつ分けておきます。
- 会計ソフトを入れるまで書かない … 道具より欄が先です。ノートで今日から始め、続いたら道具を替えます。
- 回数券の書き方を日によって変える … 受け取った日に売上にするか、前受金として分けるか。決めた書き方を毎回そろえます。
業態別の注意点
- 美容室・理容室 … シャンプーやスタイリング剤などの店販が多い業態です。物販の欄を独立させ、仕入れのレシートと対で見られるようにしておきます。
- まつげ・ネイル・エステ … 物販が少ないお店は、物販の欄を省いて施術だけでも構いません。その代わり、材料の仕入れを経費の欄にこまめに書いておきます。
- 自宅サロン … 家賃や光熱費のうち事業で使った分を経費にする「按分(あんぶん)」は、経費の線引きの話です。考え方は個人サロンの経費一覧|確定申告で落とせるもの・迷いやすいものをご覧ください。
- 整体・整骨院・鍼灸など治療院 … 保険の施術もある院は、保険の請求分と自費の売上を分けて書きます。保険の請求をどの仕組みで扱うかは、整骨院のレセコンと予約システム併用|線の引き方と確認5点で整理しています。ここで扱うのはお金の記録の話で、施術の内容には触れていません。
まとめ
個人サロンの帳簿の付け方は、次の3点に整理できます。
- 帳簿を3つに分ける … 売上・経費・お金の出入り。白色や青色10万円控除なら、簡易な記帳で足ります。
- 売上は1日1行 … 施術と物販、支払い方法ごとに欄を作り、2通りの合計が一致するか確かめます。
- 間隔でやることを分ける … 毎日は売上と現金、毎週はレシート、毎月は入金の突き合わせと月の合計です。
手書きでもエクセルでもアプリでも、毎日書く欄は同じです。道具に迷ったら、まず今日の売上を1行書くところから始めてみてください。
毎日の1行を、お会計の記録から作る
1日1行の売上は、お会計の記録がそのまま集計されれば、手で書く必要がなくなります。SALONA(サローナ)は予約・カルテ・お会計を1つで扱えるサロン向けのツールで、お会計をするだけで、日ごと・支払い方法ごとの売上がまとまります。1日の終わりには、レジの現金とお会計の記録を突き合わせられます。月の売上はExcelやPDFのほか、freee・弥生・マネーフォワードの会計ソフトに取り込める形のCSVでも出せます。SALONAは会計ソフトではないため、帳簿の仕上げや申告は会計ソフトか税理士の側で行います。
よくある質問(FAQ)
Q. 帳簿は手書きのノートでもいいですか?
A. 手書きでも帳簿として成り立ちます。国税庁の案内が求めているのは、所得が正確に計算できるよう整然と明瞭に記帳することで、紙かパソコンかの指定は書かれていません。帳簿は保存も必要で、白色申告の場合、収入や経費を書いた帳簿は7年、領収書などの書類は5年とされています(国税庁 No.2080・令和8年4月1日現在法令等)。
Q. 売上は1件ずつ書かないとダメですか?
A. 白色申告の場合、国税庁の案内では、一つ一つの取引ごとではなく日々の合計金額をまとめて書くなどの簡易な方法でもよいとされています。青色申告は記帳の方法によって決まりが変わるため、国税庁のパンフレット「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」か税務署で確認してください。
Q. 青色申告の65万円控除を狙うなら、手書きは無理ですか?
A. 65万円の控除は、複式簿記での記帳に加えて、e-Taxでの提出か帳簿の電子保存の要件を満たすことが求められます(国税庁 No.2072・令和8年4月1日現在法令等)。手書きの帳簿だけで要件を満たすのは手間が大きいため、会計ソフトを使うか税理士に任せるのが現実的です。自分に合う方法は税理士に相談すると確実です。
運営:株式会社art crat./SALONA編集部
小規模・個人サロン、自費の治療院の経営・集客・ツール選びに、現場の手順で具体的に答えるメディアです。本記事は税務の一般情報をまとめたもので、国税庁 タックスアンサー「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」「No.2070 青色申告制度」「No.2072 青色申告特別控除」(いずれも令和8年4月1日現在法令等)、「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」、パンフレット「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」を参照しています(2026年10月19日確認)。控除額・要件・保存期間は年度により変わることがあるため、最新情報と個別の判断は国税庁の一次情報および税理士など専門家にご確認ください。
公開日:2026-10-19/最終更新日:2026-10-19