年末に買う機器は経費になる?個人事業主サロンの減価償却と少額の特例
サロンの減価償却は「いつ使い始めるか」と「いくらか」で決まります
サロンの減価償却を、個人事業主向けに整理します。年末に施術ベッドや美容機器を買っても、全額がその年の経費になるとは限りません。決め手は買った日ではなく、使い始めた日と金額です。10万円・20万円・40万円の帯と、青色か白色かで、経費にできる額が変わります。
この記事でわかること
- 金額の帯ごとに、使い始めた年にいくら経費にできるか
- 12月に使い始めた場合の計算例(8万円・15万円・35万円・50万円)
- 年内に買う前に確かめる点と、よくある失敗
⚠️ 本記事は個人事業主の所得税について、国税庁の案内をもとに一般的な内容をまとめたものです(2026年11月4日確認)。法人は対象外です。個別の判断は、税理士または所轄の税務署に確認してください。
結論:金額の帯で、使い始めた年の経費が変わります
減価償却とは、長く使う高い物の代金を、使う年数に分けて少しずつ経費にする方法です。ただし金額が小さい物には、早く経費にできる決まりがあります。国税庁のNo.2100「減価償却のあらまし」(令和8年4月1日現在法令等)を、表に直すと次のとおりです。
| 1単位の金額 | 使い始めた年に経費にできる額 | 青色か白色か | 注意する点 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額 | どちらも | 使える期間が1年未満の物も同じ扱いです |
| 10万円以上20万円未満 | 3分の1(残りは翌年と翌々年に3分の1ずつ) | どちらも | 「一括償却」と呼ばれる方法です。一定の要件があります |
| 10万円以上40万円未満 | 全額(その年の合計300万円に達するまで) | 一定の要件を満たす青色申告者だけ | 2026年3月31日までに取得した物は30万円未満が上限です。2029年3月31日までの取得が対象です |
| 上記に当たらない物 | 耐用年数に応じた額を、使った月数の分だけ | どちらも | 白色で20万円以上の物と、青色で40万円以上の物はここに入ります |
耐用年数とは、その種類の資産について法律で決められた、償却に使う年数です。実際に使える年数とは別のものです。
3行目は、いわゆる「少額減価償却資産の特例」です。上限が30万円未満から40万円未満に上がったのは、財務省の令和8年度税制改正の大綱にある見直しで、所得税も同様とされています。なお、2行目の一括償却を選んだ物に、この特例は使えません。
10万円以上20万円未満の物は、青色の方なら一括償却と特例の両方が候補になります。
なぜ年末の設備購入で迷うのか
年末が近づくと、「今年は利益が出そうだから、今のうちに機器を買っておこう」と考える方がいます。ここで迷いが生まれる理由は3つです。
- 「買えば全額経費」という思い込み … 50万円の機器を12月に使い始めても、その年に経費にできるのは1万円に届きません(計算は後述します)。
- 決まりが買った日ではなく使い始めた日で動く … 注文した日や代金を払った日で考えていると、年をまたいだときにずれます。
- 検索して出てくる情報に法人向けが混ざる … 個人と法人では根拠のページも条件も分かれています。特例の上限も2026年4月に変わったばかりで、古い記事は30万円のままのことがあります。
年内に買う前に確かめる2つのこと
その1:年内に使い始められるか
No.2100の言い方は「業務の用に供した年分」です。買った年ではなく、仕事に使い始めた年の経費になります。
たとえば12月に注文して支払いも済ませたのに、届くのが1月で、使い始めも1月なら、翌年分の経費です。一括償却と特例の全額計上も同じ考え方です。年内に計上したいなら、次の順に確かめます。
- 納期と配送日を販売店に確認する
- 設置や工事、試運転が要る物は、その日程も確認する
- 年末年始の休業日を差し引いて、年内に営業で使える日があるかを見る
- 使い始めた日を、納品書や設置の記録とあわせてメモに残す
その2:自分は青色か白色か
全額計上の特例が使えるのは、一定の要件を満たす青色申告者です。白色の場合に残る選択肢は、10万円未満の全額、20万円未満の一括償却、それ以外の通常の償却です。
「今から青色にして今年分に特例を使う」は、多くの場合できません。No.2070「青色申告制度」によると、承認申請の期限は青色申告をしようとする年の3月15日までです。例外として、その年の1月16日以後に新しく業務を始めた場合は、業務を始めた日から2か月以内です。
つまり、前の年から白色で営業している方が今年分に間に合わせる時期は過ぎています。一方、今年の1月16日以後に開業した方は、開業から2か月以内ならまだ間に合います。青色申告に必要な帳簿の話は帳簿の付け方の記事で整理しています。
12月に使い始めた場合の計算例
国税庁の案内を、同じ前提で数字にしました。数字はすべて架空の例です。前提は、理容・美容機器(耐用年数5年)、定額法、12月に使い始め、です。
定額法は、毎年同じ額を経費にする計算方法です。No.2106の式は「取得価額×定額法の償却率」で、年の途中で取得したときは12で割り、その年に業務に使った月数を掛けます。耐用年数5年の償却率は0.200です。償却方法の届出をしていなければ、法定の償却方法で計算します。これは一般的には定額法です(No.2100)。
| 金額の例 | 通常の償却(12月の1か月分) | 一括償却(3分の1) | 青色の特例(全額) |
|---|---|---|---|
| 8万円 | 償却せず、全額の8万円が経費 | 対象外 | 対象外 |
| 15万円 | 15万円×0.200÷12=2,500円 | 5万円 | 15万円 |
| 35万円 | 35万円×0.200÷12=約5,833円 | 対象外 | 35万円 |
| 50万円 | 50万円×0.200÷12=約8,333円 | 対象外 | 対象外 |
読むときの注意が2つあります。
1つ目は、比べてよいのは同じ行の中だけだということです。上下の行を比べて「35万円のほうが得」とは読みません。50万円の機器が必要なのに、特例に合わせて35万円の機器に落とす話ではないからです。必要な物の金額を先に決め、その金額の行を見ます。
2つ目は、経費の合計は変わらないことです。35万円の機器なら、特例でも通常の償却でも、経費の合計はいずれ35万円です(通常の償却は、翌年から年7万円ずつ続きます)。違うのは、どの年に経費にするかだけです。特例で全額を使い切ると、翌年以降にこの機器の経費はありません。
一括償却も同じです。ただし一括償却は月数で割らないので、12月に使い始めても3分の1を計上できます。翌年と翌々年も、3分の1ずつです。
編集部の見方:年末の設備購入は「税金が減るから買う」ではなく、「来年の施術に要る物を、いつ使い始めるか」で決めるものだと考えています。仮に税金の負担が所得の20%の方が35万円を全額経費にしても、減る税金は7万円です。手元の現金は差し引き28万円減ります。買う理由が税金だけなら、現金を残したほうがよい場合も多いはずです。
金額の判定でつまずく3つの点
帯の境目近くの物は、判定の仕方で結果が変わります。ここは見落としやすいところです。
送料や設置費を含めた金額で見る
取得価額(その資産を手に入れるのにかかった額)は、本体の代金だけではありません。確定申告書等作成コーナーの案内でも、購入の代価に、引取運賃などの購入に要した費用や、業務に使うために直接要した費用を加えるとされています。本体が39万円でも、送料や据付費を足して40万円を超えると、特例の帯から外れます。
消費税の扱いで金額が変わる
No.2100によると、税込経理なら消費税を含む金額で、税抜経理なら含まない金額で判定します。免税事業者(消費税を納める義務がない事業者)は税込経理です。
たとえば本体38万円で消費税が10%なら、税込は41万8,000円です。税込で判定する方は、40万円未満の帯に入りません。
「1個・1組・1そろい」の単位で見る
所得税基本通達49-39は、金額を通常1単位として取引される単位で判定するとしています。工具、器具及び備品は、1個、1組または1そろいごとです。
同じ日にまとめて買っても、単独で使える物なら合計額で帯が決まるわけではありません。逆に、見積書の行が分かれていても、一緒に使って初めて働く物は1組と見られる場合があります。境目の物は、見積書を持って税理士か税務署に確認します。
サロンの設備に当てはめる
耐用年数は、国税庁の耐用年数(器具・備品)の表で確かめられます。確認できた例は次のとおりです。
| 設備の例 | 表の区分 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 理容や美容に使う機器 | 理容・美容機器 | 5年 |
| パソコン(サーバー用を除く) | パーソナルコンピュータ | 4年 |
施術ベッドは、区分を自分で決めないでください。 表には理容・美容機器の行のほかに、家具の中に「ベッド」の行もあり、耐用年数が違います。治療院なら医療機器の区分を見ることもあります。どの区分に入るかは、ベッドの種類や使い方で判断が分かれる可能性があり、本記事では断定しません。カタログを手元に、税理士か税務署に確認してください。
シャンプー台のように設置工事を伴う設備、タブレット、中古で買う機器も、区分や年数に迷ったら同じ窓口で確認します。工事費の見積もりが別にあるときは、あわせて見せます。
買うか、借りるか
高い機器はリースも選択肢です。リースの場合は毎月のリース料を経費にしていく形が多いものの、契約の内容で扱いが変わることがあります。本記事では結論を出さず、契約前に確認する項目だけ挙げます。
- 月額と総支払額、リース期間
- 途中で解約できるか、解約したときにいくらかかるか
- 期間が終わったあと、機器はどうなるか(返却か、買い取りか)
- 故障したときの修理の負担は誰か
- 税務上の扱い(契約書を見せて税理士に確認)
月の固定費が増える点も見ておきます。毎月出ていく額として重くないかは、固定費と変動費の記事の考え方で確かめられます。
買う前のチェックリスト
そのまま控えて使える形にしました。
- ☐税金の話を抜きにしても、来年の営業に要る物か
- ☐支払ったあと、数か月分の固定費を払える現金が残るか(何か月分かは店ごとに決める)
- ☐年内に届き、設置が終わり、営業で使える日があるか
- ☐送料・設置費を足した金額はいくらか
- ☐消費税は税込と税抜のどちらで判定するか
- ☐自分は今年分が青色か白色か
- ☐特例を使う物の今年の合計は、300万円に収まるか
- ☐耐用年数の区分に迷う物は、確認先が決まっているか
- ☐納品書・領収書と、使い始めた日のメモを残す場所は決まっているか
よくある失敗とNG
- 税金を減らすために買って、現金が足りなくなる … 経費が増えても、減るのは税金の分だけです。年明けの家賃や材料の支払いを先に確かめます。
- 年内に届かない、または使っていない … 注文しただけ、箱のまま置いているだけでは、使い始めたと説明するのは難しいところです。
- 合計300万円の上限を見ていない … 開業の年など、まとめて買うと届くことがあります。超えた分は特例の対象になりません。
- 固定資産台帳に載せず、翌年に償却を忘れる … 固定資産台帳は、高い物の取得日・金額・償却の進み具合を書いておく一覧です。ノートやエクセルでも、取得日・金額・耐用年数・その年の償却額の欄があれば始められます。通常の償却と一括償却は翌年以降も続くので、記録がないと計上が漏れます。
- 特例で全額経費にしたから、固定資産税は関係ないと思う … 償却資産の固定資産税は、市区町村の扱いを確かめます。たとえば広島市のよくある質問では、10万円未満で一時に経費にした物や20万円未満で一括償却した物は申告の対象外とする一方、少額の特例を使った物は申告の対象としています(同ページの記載は、2026年3月31日までに取得した30万円未満の物についてです)。2026年4月以後に取得した物も含めて、店舗のある市区町村の案内で確かめてください。
- 分割払いだから、払った分だけ経費と考える … 定額法の式は取得価額をもとにしており、支払いの回数では決まりません。分割やローンの場合の処理は、会計ソフトの案内か税理士に確認します。
- 法人向けの記事を読んで判断する … 特例の条件や根拠のページは、個人と法人で分かれています。個人事業主はNo.2100を起点に確かめます。
業態別の差分注記
- 美容室・理容室 … シャンプー台やセット椅子など、設置や工事を伴う設備が多い業態です。工事費が金額の判定に入るかどうかで帯が変わるので、見積もりの内訳を残します。
- ネイル・まつ毛 … 10万円未満の機器なら、全額をその年の経費にできます。パソコンやタブレットを私用と兼ねる場合は、仕事で使う分の線引きが別に要ります。考え方は経費の一覧の記事の家事按分の節をご覧ください。
- エステ … 機器が高額になりやすく、40万円以上なら通常の償却です。年末に使い始めても1か月分しか計上できないので、資金繰りはその前提で組みます。
- 整体・鍼灸など治療院(自費) … 施術ベッドや機器の区分に迷いやすい業態です。先ほどのとおり、区分は確認してから決めます。ここでは保険請求の話は扱いません。
- 面貸し・シェアサロン … 機器を人に貸している場合は要注意です。No.2100によると、2022年4月1日以後に取得した物を貸付の用に供すると、貸付が主要な業務である場合を除き、ここで挙げた少額の扱いが使えません。心当たりがある方は確認してください。
- 開業準備中 … 開業前に買った物は、使い始めるのが開業後になります。開業にかかるお金の総額は開業費用の記事で整理しています。
まとめ
個人事業主のサロンが高い設備を買うときは、次の順に確かめます。
- いくらか … 送料・設置費と消費税の扱いまで含めて、帯を決める
- いつ使い始めるか … 年内に営業で使えないなら、翌年分の経費になる
- 青色か白色か … 40万円未満の全額計上は、一定の要件を満たす青色申告者の決まり
- 買っても現金は足りるか … 経費の合計は変わらず、減るのは税金の分だけ
年末だから買う、ではなく、要る物を要るときに買う。そのうえで使い始めの日を調整できるなら、この記事の表を使ってください。申告全体の段取りは確定申告の準備の記事にまとめています。個別の判断は、税理士または税務署に確認してください。
設備の計算の前に、売上の記録を整える
減価償却の計算には、会計ソフトか税理士の手を借りる方が多いはずです。その手前の売上の記録は、毎日のお会計からまとめられます。SALONA(サローナ)は予約・カルテ・お会計を1つで扱えるサロン向けのツールで、月の売上を会計ソフトに取り込める形のCSVで出せます。SALONAは会計ソフトではないため、償却の計算や帳簿の仕上げ、申告は会計ソフトか税理士の側で行います。
よくある質問(FAQ)
Q. 12月に買って1月に届いた機器は、どちらの年の経費ですか?
A. 国税庁の案内では、業務の用に供した年分の経費とされています。1月に使い始めたなら、翌年分です。買った日や支払った日ではなく、使い始めた日で考えます。使い始めた日がわかるよう、納品書や設置の記録を残してください。個別の判断は税理士または税務署に確認してください。
Q. 白色申告でも、30万円や40万円の機器を全額経費にできますか?
A. 10万円以上40万円未満の物を全額計上できる特例は、一定の要件を満たす青色申告者のためのものです(国税庁 No.2100・令和8年4月1日現在法令等)。白色の場合は、10万円未満なら全額、10万円以上20万円未満なら3分の1ずつ3年間で計上でき、それ以外は耐用年数に応じて償却します。
Q. 施術ベッドの耐用年数は何年ですか?
A. 耐用年数の表には、理容・美容機器の行と、家具の中の「ベッド」の行があり、年数が違います。お使いの施術ベッドがどの区分に入るかは、種類や使い方で判断が分かれる可能性があるため、カタログを手元に税理士か税務署に確認してください。金額が10万円未満なら全額経費になるので、まず金額の帯を確かめると整理しやすくなります。
運営:株式会社art crat./SALONA編集部
小規模・個人サロン、自費の治療院の経営・集客・ツール選びに、現場の手順で具体的に答えるメディアです。本記事は税務の一般情報をまとめたもので、国税庁 タックスアンサー「No.2100 減価償却のあらまし」「No.2106 定額法と定率法による減価償却」(いずれも令和8年4月1日現在法令等)、「No.2070 青色申告制度」、確定申告書等作成コーナー「耐用年数(器具・備品)」「取得価額」、所得税基本通達49-39、財務省「令和8年度税制改正の大綱」、広島市「償却資産 よくある質問」を参照しています(2026年11月4日確認)。金額・要件・期限は年度により変わることがあるため、最新情報と個別の判断は国税庁の一次情報および税理士など専門家にご確認ください。
公開日:2026-11-04/最終更新日:2026-11-04