経営の数字・お金

サロンの割引を特定の人だけに|クーポンと会計値引きの使い分け

約13分で読める

サロンの割引を特定の人だけに当てるには、先に「誰に」を1行で書く

「初めての方で、指名してくださった方だけ」「3回目以降の方全員」。サロンの割引を特定の人だけに当てたいとき、最初に決めるのは金額ではなく対象の書き方です。同じ値引きでも、クーポンにするか、メニューを分けるか、お会計で引くかで、当たる範囲が変わります。この記事でわかることは3つです。(1)割引の4つの形と、それぞれが絞れる条件、(2)条件が2つ重なる割引の崩れにくい分け方、(3)決める前に確かめる3点です。

なお、初回割引をいつやめるかはサロンの初回割引はいつやめる?に、指名料をいくらにするかはサロンの指名料・時間外料金の決め方にまとめています。この記事は、値引きを誰に当てるかだけを扱います。

結論:条件が1つなら予約前に、2つ以上なら「予約で目印・お会計で値引き」

先に答えをお伝えします。

  1. 対象を1行で書き、条件がいくつ掛かっているかを数える。「初回だけ」は条件1つ。「初回で、かつ指名した人」は条件2つです。
  2. 条件が1つで、予約の時点で分かるものなら、予約前に適用される形(クーポン・対象を分けたメニュー)で足ります。
  3. 条件が2つ以上、または当日にならないと決まらない条件が入るなら、予約では目印だけ付け、値引きはお会計で行い、理由をメモに残します。

紙の台帳と電卓でも、予約ツールとレジでも、この順番は同じです。

割引が対象外の人にまで当たってしまうのは、条件を1つ落としているからです

「初回指名は無料」という特典を、「初回限定の値引き」として作ったとします。見た目は同じですが、この形が見ているのは「初回かどうか」だけです。指名したかどうかは見ていません。すると、指名なしで来られた初めての方にも、同じ金額が引かれます。

こうしたずれは、特典の言葉と、割引の形が見ている条件が食い違うところで起きます。特典の言葉には条件が2つ入っているのに、形のほうは1つしか見ていない。それだけのことですが、気づくのが月末に売上を見たときになりがちです。

もう1つの崩れ方は逆向きです。対象を絞るために、初回用・再来用・指名あり・指名なしとメニューを掛け算で増やしていくと、一覧が長くなり、お客様がどれを選べばよいか迷います。メニューの数が増えすぎたときの畳み方はサロンのメニューが多すぎるときの整理術にまとめています。

手順1 割引の対象を1行で書き、条件の数を数える

紙に、割引ごとに1行ずつ書き出します。

書き出しの例条件の数その条件が分かるとき
初めて来られた方1つ予約の時点
誕生月の方1つ予約の時点
3回目以降の方全員1つ予約の時点(来店回数の記録があれば)
初めて来られた方のうち、指名した方2つ初回は予約の時点、指名は予約時か当日
今日だけ、この方だけ1つ(人の判断)当日

ポイントは右端の列です。予約の時点で分かる条件か、当日にならないと決まらない条件か。指名は予約のときに決まることもあれば、当日に「やっぱりこの人で」と変わることもあります。こういう条件が1つでも入っていると、予約前に適用される形だけでは足りなくなります。

手順2 割引の形は4つ。それぞれ絞れる条件が違う

割引の形は、おおむね次の4つに分けられます。呼び方はお店や道具によって違うので、中身で見分けてください。

割引の形絞りやすい条件苦手なこと
予約前に渡すクーポン初回・来店回数・誕生月など、予約の時点で分かる条件当日の中身(誰を指名したか、何を追加したか)。条件を満たさない人にも当たりやすい
対象を分けたメニュー(初回用・再来用など)予約の時点で、お客様自身に選んでもらえる条件条件を掛け算すると一覧が散らかる
目印のオプション(0円や、値引き用の項目)料金ではなく記録のために置く。後から件数を数えられるそれ自体では金額が動かないことが多い
お会計のときの値引きいちばん細かく絞れる。当日決まった条件にも対応できる人の判断に頼るので、ルールとメモがないと抜けや二重値引きが起きる

クーポンで何を条件にできるかは、道具によって違います。当日の指名を条件にできるかどうかは、お使いの道具で一度確かめてください。確かめられない場合は、「できない」前提で組むほうが事故が起きにくくなります。

手順3 条件が2つ重なる割引は「予約で目印・お会計で値引き」に分ける

条件が2つ以上ある割引は、次のように役割を分けると崩れにくくなります。

  1. 予約の段階では、目印だけ付ける。 対象を分けたメニューや、0円のオプション、予約メモへの一言など、形は何でも構いません。「この方は対象かもしれない」と当日の担当が気づければ十分です。
  2. お会計のときに、条件がそろっているかを確かめてから引く。 初回であること、指名であることを、その場で確認します。
  3. 引いたら、理由をメモに残す。「初回指名無料」のように、特典の名前をそのまま書きます。

メモを残す理由は2つあります。1つは、後から「なぜこの日は安かったのか」を説明できること。もう1つは、月末にその特典を何件・いくら使ったかを数えられることです。この数字がないと、特典を続けるかやめるかを決める材料がありません。

指名料のように、もともと料金を足しているものを無料にする場合は、料金そのものを0にしないほうが記録は残ります。料金は通常どおり付けたうえで、お会計で同じ額を引く。こうすると「指名があった」という記録と「今回は無料だった」という記録が、両方残ります。

手順4 決める前に確かめる3点

形を選ぶ前に、次の3つに答えを書いておきます。

  1. その割引の条件は、予約の時点で決まりますか。当日に決まりますか。 当日に決まるなら、お会計で引く形を含めます。
  2. スタッフが複数いる場合、誰がお会計で値引きしてよいですか。上限はいくらですか。 お会計の値引きは細かく絞れる代わりに、人によって判断が揺れます。「特典の名前が付いているものだけ」「それ以外はオーナーに確認」のように線を引いておきます。
  3. 月末に、その割引を何件・いくら使ったか数えられますか。 数えられない割引は、やめ時が決められません。初回割引のやめ時の考え方はサロンの初回割引はいつやめる?にあります。

2つめは、ひとりサロンでも無関係ではありません。自分1人でも、忙しい日と余裕のある日で判断が変わります。特典の一覧を紙1枚に書いてレジの横に置くだけでも、揺れを小さくしやすくなります。

手順5 割引を増やさずに済む場合もある

割引を新しく作る前に、次の2つを見直してみてください。

  • 対象を絞るだけで足りないか。 すでにある割引の対象を「初回全員」から「初回で指名した方」に狭めれば、新しい割引を足さずに済むことがあります。割引の種類が増えるほど、手順4の2つめ(誰が引いてよいか)の管理が重くなります。
  • 値引き以外の形にできないか。 指名料をいただかない、施術時間を少し延ばす、次回使える特典にする。お客様への感謝は、値引き額だけで表す必要はありません。

もう1つ、「割引すればお客様が来る」という前提は、置かないほうが判断を誤りません。割引は、来てくださった方の中の誰にお礼をするかを決める道具として使うほうが、数字の見通しが立ちます。1回あたりの売上を見る考え方は客単価とは?計算方法と上げ方の基本にまとめています。

指名制度のある整体院でうかがった「初回指名無料」の組み方

指名制度のある、スタッフが複数いる自費の整体院のオーナーAさん(仮名)に、2026年9月にお話をうかがいました。Aさんのお店では、初めての方、または担当として1回目の方が指名したときは、指名料を無料にしています。指名料はお店の設定で1回550円です(金額はこのお店の1例です)。

話の途中で、私たちのほうから「初回限定の値引きとして550円引きを作れば、自動で済むのではないか」という案を出しました。すぐにAさんから返ってきたのが、初回でも指名しない人がいる、という指摘です。「フリーの人もいるんで」。その形だと、指名しないで来られた初めての方にも550円が引かれてしまいます。特典の言葉には「初回」と「指名」の2つの条件が入っているのに、その形は「初回」しか見ていなかった。手順1で書いた、条件が1つ落ちる典型です。

Aさんご自身も工夫をされていました。メニューのオプションに、0円の「無料指名」という項目を作り、目印として使うやり方です。金額は動かないけれど、お会計のときに「この方は無料指名だ」と分かる。一方で、指名料そのものを0にしてしまうと、今度は「指名した」という記録が出てこなくなる、という悩みもお話しくださいました。

最終的に落ち着いたのは、指名料は550円のまま付け、お会計のときに全体から550円を引き、「初回無料指名」とメモを添えて残すやり方です。私たちからこの形をご提案し、Aさんも合意されました。指名の記録は残り、金額は550円少なくなる。予約の段階の目印(0円のオプション)と組み合わせれば、当日の担当が引き忘れることも防げます。

この例で大事なのは、道具の機能ではありません。特典の言葉を条件に分解し、予約の時点で分かる条件と、当日に確かめる条件を分けたことです。

「通常価格」と並べて見せるときの注意

割引を「通常◯円→今だけ◯円」のように見せる場合は、比べる価格に気をつけます。消費者庁の二重価格表示のページでは、過去の販売価格と比べるときは「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を使えば不当表示のおそれはないとし、そうでない価格を使うなら、いつ・どのくらいの期間売っていた価格かを正確に示す必要があると説明しています。

実務では、実際にその価格で受けていた実績のあるメニューとだけ比べると覚えておけば十分です。一度も売ったことのない価格を「通常価格」と書かないでください。

よくある失敗

  1. 特典の名前だけ決めて、条件を書かない。「初回特典」とだけ決めると、紹介で来た方、家族の2人目、数年ぶりの方が対象かどうかで毎回迷います。対象は1行の文にしてください。
  2. お会計の値引きにメモを残さない。 当日は覚えていても、月末には理由が分かりません。特典の名前をそのまま書くだけで足ります。
  3. クーポンとお会計の値引きが重なる。 同じ特典を、予約前のクーポンとお会計の値引きの両方で引いてしまう二重値引きです。1つの特典は、1つの形でだけ引くと決めておきます。
  4. 条件を掛け算してメニューを増やす。 初回×指名×コース別で作ると、あっという間に一覧が倍になります。メニューで分けるのは条件1つまで、と決めておくと散らかりません。

業態ごとに気をつけたい点

  • 美容室 指名の有無が当日に変わることもある業態です。指名がからむ特典は、お会計で確かめる形を含めておくと安全です。
  • ネイル・まつげ デザインの追加や本数の変更など、当日決まる中身が多い業態です。「追加した方だけ」の割引は、予約前のクーポンでは絞りにくいので、お会計で引く形にしておきます。
  • エステ・リラクゼーション コースや回数のまとめ売りと割引が重なりやすいので、どの割引と併用できるかを1行で書いておきます。
  • 自費の整体・治療院 初診料の扱いと割引が混ざりやすいところです。新規の方だけ料金が違う場合の見せ方は整体院・サロンの初診料は取る・取らない?にあります。割引の案内は料金と通い方の話にとどめ、体の変化については書かないでください。
  • ひとりサロン 判断する人が自分1人なので、ルールを書かずに済ませがちです。特典の一覧をレジ横に1枚置くことから始めてください。

再来店の方に向けた割引のタイミングは再来店クーポンは何ヶ月後に送る?、来店回数に応じたお礼の設計はサロンのスタンプカードは何個で設計する?にまとめています。

まとめ:割引は「形」より先に「誰に」を決める

  1. 割引ごとに、対象を1行の文で書き、条件の数を数える。
  2. 4つの形(予約前のクーポン・対象を分けたメニュー・目印のオプション・お会計の値引き)が、それぞれ何を絞れるかを見て選ぶ。
  3. 条件が2つ以上、または当日に決まる条件が入るなら、予約で目印・お会計で値引き・理由をメモに分ける。
  4. 誰が引いてよいか、上限、月末に数えられるかの3点を先に書く。
  5. 新しい割引を足す前に、対象を絞るだけで足りないかを見直す。

紙1枚あれば、今日のうちに1から4まで決められます。

予約で分けて、お会計で引いて、記録まで残すなら

SALONA(サローナ)では、メニューを新規の方・再来店の方などに分けて出せるほか、料金を足すだけのオプション(0円でも作れます)を目印として使えます。お会計では手動の値引きにメモを添えて残せ、クーポンやポイントとも併用できます。予約で分ける、お会計で引く、記録が残る、を1つの流れで回せます。

SALONAの予約とお会計の流れを見てみる →


よくある質問(FAQ)

Q. 初回限定のクーポンで「初回指名無料」を作ってもよいですか?
A. 指名しないで来られる初めての方がいないお店なら、それで足ります。いるお店では、そのクーポンは「初回かどうか」しか見ていないため、指名なしの方にも同じ額が引かれてしまいます。お使いの道具で、クーポンの条件に当日の指名を含められるかを確かめ、含められないなら、予約では目印だけ付けてお会計で引く形にしてください。

Q. 指名料を無料にするとき、指名料を0円に設定すればよいのでは?
A. 金額は合いますが、「指名があった」という記録が残りにくくなります。担当ごとの指名数を後から見たいなら、指名料は通常どおり付けたうえで、お会計で同じ額を引き、特典の名前をメモに残す形のほうが、記録と金額の両方が残ります。

Q. お会計での値引きは、スタッフの判断に任せてよいですか?
A. 任せる範囲を先に書いておくことをおすすめします。「名前の付いた特典だけは各自で引いてよい」「それ以外はオーナーに確認」「1回あたりの上限は◯円」のように線を引き、値引きのたびに理由をメモに残してもらいます。月末にメモを見返せば、特典ごとの件数と金額が分かり、続けるかどうかの判断にも使えます。


運営:株式会社art crat./SALONA編集部
小規模・個人サロン、自費の治療院の経営・集客・ツール選びに、現場の手順で具体的に答えるメディアです。
公開日:2026-09-26/最終更新:2026-09-26
本記事の一部は、SALONA利用サロンへのヒアリングに基づき匿名化して掲載しています。

この記事をシェア

XでシェアLINEで送る