スタッフ・組織づくり

サロンの顧客をスタッフに引き継ぐ順番|誰から移し、どう伝えるか

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サロンの顧客をスタッフに引き継ぐときは、移す順番を先に決めます

ひとりで回してきたサロンに、初めてスタッフが入る。そのとき迷うのが「自分についているお客様を、誰から、どの順でスタッフに移すか」です。サロンの顧客をスタッフに引き継ぐ場面に向けて、この記事でわかることは3つです。(1)新規のお客様をまず店主が見る理由、(2)既存のお客様を移す順番の判断基準、(3)担当が変わることをお客様にどう伝えるかと、その文例です。

なお、スタッフにどんな情報を渡すか(カルテに残す項目や判断の線の引き方)はひとりサロンのスタッフ引き継ぎ|人が入る前に渡す5つのことに、指名なしの予約を誰が受けるかは指名なしの予約は誰が受ける?2〜3人のサロンの振り分けルールにまとめています。この記事は、店主の既存のお客様を「どの順で移し、どう伝えるか」に絞ります。

結論:一度に移さず、3段に分けて考える

先に答えをお伝えします。お客様は一度に移しません。次の3段で考えます。

  1. 新規のお客様は、まず店主が見る。 初回で決めたこと・聞いたことを、スタッフが読める形で残します。
  2. 既存のお客様は、施術の内容が安定している方から移す。 毎回の内容がほぼ同じで、日にちや担当に融通がきく方が先です。
  3. 難しい方は、店主が続けて見る。 全員を移すことは目標にしません。

あわせて、移す方の予約枠は長めに取ること、担当が変わることはお客様の予約の取りやすさとして伝え、合わなければ店主に戻れる道を残すこと。この2つを決めておけば、紙の予約台帳でも今日から進められます。

担当を変えるとお客様が離れそうで、踏み出せない理由

スタッフが入ったのに、店主の予約表は埋まったまま。そんな状態が続くことがあります。踏み出せない理由として考えられるのは、次の3つです。

1つ目は、お客様が「店」ではなく「店主」に通っているように見えること。 ひとりで続けてきたお店ほど、お客様との関係は店主個人と結びついています。担当を変えると言った瞬間に、その関係が切れてしまう気がします。

2つ目は、スタッフに任せてよい基準が言葉になっていないこと。 「この方なら任せられる」という感覚はあっても、それを説明できる形にしていないため、誰から移すかがその日の気分で決まります。結果として、誰も移らないまま時間が過ぎます。

3つ目は、新規と既存が同じ入口から入ってくること。 店主に新規の方を見てほしいのに、予約の入口が分かれていないと、空いているスタッフの枠に初めての方が入ってしまいます。そうなると「やはりまだ任せられない」と感じ、移す話がまた止まります。

つまり、問題は「移すかどうか」ではなく、移す順番と、移し方の決まりが無いことです。順番が決まれば、1人ずつ進められます。

新規のお客様は、まず店主が見る

最初に決めるのは、新規のお客様をどうするかです。おすすめは、しばらくは店主が初回を担当する形です。

理由は、初回が「このお店のいつもの基準」を決める回だからです。どこまで仕上げるか、どんな言葉で説明するか、次回をどう提案するか。初回でお客様と決めたことが、2回目以降の土台になります。この土台を店主が作っておけば、2回目以降にスタッフが入っても、同じ基準で続けられます。

初回を店主が見るときは、次の3つをスタッフが読める形で残すところまでを1セットにします。

  1. お客様と決めたこと(仕上がりの目安、次回の間隔、続けていく内容)
  2. お客様が気にしていること(時間、痛みや力加減、話しかけられ方の好み)
  3. 2回目以降をスタッフに渡せそうか、店主の見立て(「次回から渡せる」「数回は自分で見る」「当面は自分で見る」の3つで十分です)

3番を初回のうちに書いておくのがコツです。あとで「誰を移そうか」と考えるとき、この一言がそのまま候補の一覧になります。カルテに何を残すかの詳しい項目は、ひとりサロンのスタッフ引き継ぎの「5分で追いつける最小項目」を参考にしてください。

あわせて、予約の入口で「初めての方」と「2回目以降の方」に案内する内容を分けておくと、新規の方が意図せずスタッフの枠に入ることを防げます。たとえば、初めての方向けのメニューは店主だけが担当するものにしておき、2回目以降の方向けのメニューはスタッフも担当できるものにしておく、という分け方です。紙の台帳や電話受付なら、「初めての方は店主の枠にだけ入れる」と受付の決まりに書いておきます。予約システムを使っているなら、メニューごとに予約できるお客様や担当できる人を分けられるかどうかを確認しておきます。できることはツールによって異なります。

既存のお客様を移す順番の決め方

次に、すでに店主についている既存のお客様です。ここで使える基準を表にまとめます。

見るところ先に移しやすい方後回しにする方
施術の内容毎回の内容がほぼ同じ/施術の内容が安定している毎回その場で判断することが多い
日にち・担当への融通「別の日でもいい」「いつもの担当でなくてもいい」と言ってくださる決まった曜日・時間・担当でないと難しい
お店に通う理由メニューや仕上がりで通っている店主との会話や関係そのものが大きな理由
こだわり仕上がりの好みがはっきりしていて、言葉で伝えられる好みが細かく、店主の感覚でしか合わせられない
予約の状況次回予約を取りそびれた方・急ぎでない方毎回次回予約で同じ枠を押さえている方

使い方は簡単です。お客様を1人ずつ思い浮かべて、「先に移しやすい方」に当てはまる行がいくつあるかを数えます。当てはまる行が多い方から、移す候補にします。

ここで言う「安定している」は、施術の難しさの話です。体や肌の状態を判断する話ではありません。毎回の手順がほぼ決まっていて、前回の記録を読めば同じ内容を再現できる方、という意味で使ってください。

最後の行の「予約の状況」は見落とされがちですが、始めやすい入口です。次回予約で毎回同じ枠を押さえている方は、無理に動かす必要がありません。まずは次回予約を取りそびれた方や、「別の日でもいい」とおっしゃる方の予約からスタッフの枠で受けていくと、今のお客様の予定を崩さずに移し始められます。次回予約の声のかけ方は美容室の次回予約の取り方|押し売りにならない声かけとタイミングにまとめています。

移すのは「お客様」ではなく「お客様との約束」

順番の表を作ってみると、あることに気づきます。先に移しやすい方は、「いつもの」が言葉にできる方です。

お客様がそのお店に通い続けているのは、店主という人そのものだけでなく、「いつもの仕上がり」「いつもの時間で終わる」「いつもの話し方」といった、毎回守られてきた約束があるからです。担当が変わってお客様が離れてしまうとき、その理由は人が変わったことそのものより、その約束が守られなかったことにある、というのがこの記事の考え方です。

だから移す順番は、約束を言葉にしやすい方から、が理にかなっています。「仕上がりはこの長さ」「施術は60分で終わってほしい」「施術中はあまり話しかけない」。こう書ける方は、スタッフも同じ約束を守れます。反対に、店主自身も言葉にできない約束で通っている方は、移す前にまず店主がその約束を書き出すところから始めます。書き出せないうちは、店主が続けて見ていて構いません。

スタッフに移した直後に起きやすいこと

移し始めた最初の数か月に、よく起きることが3つあります。

1. 施術の時間が、店主より長くなる。 慣れていないので当然です。店主の所要時間のまま枠を取ると、次の予約に食い込みます。移す方の予約は、最初のうちは枠を長めに取ると決めておきます。どれだけ長くするかはメニューとスタッフの習熟によるので、実際にかかった時間を数回測ってから決めると無理がありません。

2. お客様が「いつもと違う」と感じる。 仕上がりだけでなく、声のかけ方や段取りの違いに気づかれることもあります。最初の数回は、店主が仕上がりを確認したり、ひと言あいさつに入ったりすると、お客様の安心につながります。

3. 店主の予約表が思ったほど空かない。 移したお客様の分、店主の枠が空くはずですが、新規の方の初回を店主が見ている間は、すぐには空きません。移すのは店主の負担を一気に減らすためではなく、新規の方を受けられる余白を少しずつ作るため、と考えておくと焦らずに済みます。

今年スタッフを迎えたケア系サロンのオーナーの進め方

ここからは、サロンオーナーへのヒアリングでうかがった内容です。特定できない形に匿名化しています。以下はヒアリングメモの要旨で、発言そのままの引用ではありません。

今年スタッフを迎えたケア系のサロンのオーナーAさん(仮名)は、スタッフの教育を進めながら、お客様の移し方を次のように考えていました。

  • 新規のお客様は、まずAさんが1回全部見る。その後、スタッフに割り振る形にしていきたい。
  • 難しい方はAさんが続けて見て、スタッフで大丈夫そうな方はスタッフに回していく。
  • Aさん自身のペースで予約時間を取ってきたので、スタッフが担当すると少し時間を長くしないといけない。Aさんの想定した時間で終わらないことがある。
  • 既存のお客様は次回予約で埋まっている方が多い。次回予約を取りそびれた方や、別の日でも構わない方の予約を、スタッフで受けていけたらいい。
  • 新規の方にはAさんのメニューだけを見せ、既存の方にはスタッフでも受けられるメニューを見せたい。

注目したいのは、Aさんが一度に移す計画を立てていない点です。新規はまず自分、移すのは大丈夫そうな方から、難しい方は自分が続ける。この記事の結論で挙げた3段は、Aさんのこの考え方をそのまま型にしたものです。

もう1つは、時間の違いを最初から計算に入れている点です。スタッフの施術が店主の想定時間で終わらないことを前提に、どう枠を取るかを考えていました。移す話と、枠の長さの話をセットで考えているところが参考になります。

なお、これはAさんが移し始める段階でのお話です。この進め方でお客様が離れなかった、という結果の証言ではありません。順番の考え方の一例として受け取ってください。

お客様への伝え方と文例

担当が変わることの伝え方で大事なのは、次の4つです。

  1. いきなり告知しない。 最初は店主とスタッフが一緒に入る、スタッフが短い工程だけ担当する、といった形で、お客様がスタッフに会う機会を先に作ります。
  2. 理由は「お店の都合」ではなく「お客様の予約の取りやすさ」で伝える。 「スタッフが入ったので、ご希望の日に予約を取りやすくなりました」という伝え方です。「店主が忙しくなったので」は、お客様に関係のない理由に聞こえます。
  3. 戻れる道を用意する。 「合わなければ、いつでも店主の担当に戻せます」と添えておくと、お客様は試しやすくなります。
  4. 伝えるタイミングは、次回予約を決めるときかお会計のとき。 お客様が日にちを考えている場面なので、「この日ならスタッフの枠が空いています」という話につなげられます。

以下の文例を、お店の言葉に合わせて直してお使いください。

対面(次回予約を決めるとき)

次回のご予約ですが、ご希望の日は私の枠が埋まっていまして。同じ日にスタッフの◯◯なら空いています。前回までの内容は記録で共有していますので、いつもと同じ内容でお受けできます。もし合わないと感じたら、遠慮なくおっしゃってください。次からまた私が担当します。

対面(スタッフが同席したあとのお会計で)

今日一緒に入っていた◯◯です。◯◯さまの内容は私と同じ記録を見て進めています。ご都合の合う日が私の枠で取りにくいときは、◯◯の枠もご案内できますので、そのときはお声がけください。

LINE(次回予約を取りそびれた方へ)

◯◯さま、いつもありがとうございます。次回のご予約がまだでしたので、ご連絡しました。◯月は私の枠が埋まりつつありますが、スタッフの◯◯の枠でしたら◯日・◯日に空きがございます。いつもの内容は記録で共有しています。ご希望の日があれば、このままご返信ください。もちろん、私の空きが出る日をお待ちいただくこともできます。

どの文例も、決めるのはお客様という形にしています。担当を変えることを店から決めて伝えるのではなく、選べる道を1つ増やした、という伝え方です。

よくある失敗

新規のお客様から先にスタッフに任せる。 店主の枠が埋まっているので、空いているスタッフに初めての方を入れたくなります。ただ、初回はお店の基準を決める回です。ここを任せると、2回目以降の基準が人によって分かれます。新規はしばらく店主が見て、既存の安定した方から移すのが順番です。

「来月から担当が変わります」と一斉に告知する。 全員に同時に伝えると、お客様は「選べない変更」として受け取ります。1人ずつ、その方の予約の場面で、選べる形で伝えます。

移したあと、店主が様子を聞かない。 移して終わりにすると、小さな違和感が積み重なっても気づけません。最初の数回は、店主が仕上がりを確認するか、お会計のときにひと言感想をうかがうようにします。スタッフにも「いつもと違うと言われたこと」を短く記録してもらうと、次の方を移すときに役立ちます。

移す方の枠を、店主の所要時間のまま取る。 スタッフの施術が延びて、次のお客様を待たせることになります。最初は長めに取り、実際の時間を測ってから縮めます。

なお、スタッフを社員として雇うか業務委託にするか、歩合をどう決めるかは、この記事の範囲を超えます。社会保険労務士などの専門家や、所管の窓口に確認してください。

業態別に気をつけたいこと

  • 美容室:薬剤の種類や配合、放置時間の記録がそろっている方から移します。カラーの色味は言葉にしづらいので、前回の記録に加えて、お客様と一緒に仕上がりの写真を見ながら確認すると、担当が変わっても基準がずれません。
  • ネイル・まつげ:デザインや毛の向きのこだわりが強い方は後回しにします。移した方には、次の来店時に持ちの具合をうかがい、店主のときと差がないかを確認します。リペアやお直しの扱いも、移す前に決めておきます。
  • エステ・リラクゼーション:力加減の好みが分かれる業態です。好みの強さを数字や言葉で記録できている方から移します。コースや回数券の残りがある方は、担当が変わっても残りの扱いが変わらないことを先に伝えておきます。
  • 整体・治療院などのケア系:担当が変わるときにも、効果を約束する言い方をしないという基準を崩さないことが大切です。担当が替わる理由や結果を体の変化で語らず、「前回までの施術の記録を共有して、同じ内容で進めます」と、施術の内容で伝えます。お客様への説明の表現は、口頭ではなく文字でスタッフに渡しておきます。

まとめ

サロンの顧客をスタッフに引き継ぐときの要点は3つです。

  1. 一度に移さない。 新規はまず店主が見る、既存は施術の内容が安定している方から移す、難しい方は店主が続ける、の3段で考えます。
  2. 移す順番は「約束を言葉にしやすい方」から。 いつもの仕上がり・時間・話し方を書き出せる方は、スタッフも同じ約束を守れます。移す方の枠は、最初は長めに取ります。
  3. 伝え方は、お客様が選べる形で。 理由は予約の取りやすさで伝え、合わなければ店主に戻れる道を残します。タイミングは次回予約を決めるときかお会計のときです。

今日から始めるなら、次回予約を取りそびれている既存のお客様を3人思い浮かべて、上の表で当てはまる行を数えてみてください。いちばん多い方が、最初にスタッフの枠をご案内する候補です。

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初めての方と2回目以降の方で、案内する担当を分けておくには

新規の方は店主、既存の方はスタッフも、という分け方は、予約の入口で案内するメニューを分けておくと続けやすくなります。SALONA(サローナ)では、施術メニューごとに予約できるお客様(初めての方・2回目以降の方)と、担当できるスタッフを決められます。お客様のカルテはスタッフと共有できるので、店主が初回に残した記録を、次の担当がそのまま読めます。お客様を少しずつ移していく準備の一つとしてご覧ください。

SALONAの予約とカルテの仕組みを見てみる →

よくある質問(FAQ)

Q. 担当が変わると伝えたら、お客様が離れてしまいませんか。
A. 離れるかどうかは、伝え方と戻れる道があるかに左右されます。担当を店の都合で一方的に変えるのではなく、「ご希望の日にスタッフの枠が空いています」と、お客様が選べる形でご案内します。そのうえで「合わなければいつでも店主に戻せます」と添えておくと、お客様は試しやすくなります。最初は店主とスタッフが一緒に入るなど、スタッフに会う機会を先に作っておくのも一つの方法です。

Q. 指名料をいただいている場合、スタッフに移したら料金はどうなりますか。
A. お店の方針次第です。店主の指名料をいただいていた方がスタッフに移るとき、指名料をどう扱うかは、移し始める前に決めておき、お客様にも予約の時点で分かるようにしておきます。指名料そのものの決め方はサロンの指名料・時間外料金の決め方に、担当によって料金を分ける考え方は美容室のスタイリスト別料金の決め方にまとめています。

Q. 新規のお客様は、いつからスタッフに任せてよいですか。
A. 期間で決めるより、店主が決めた基準を満たしたかどうかで決めるのがおすすめです。たとえば、初回のカウンセリング(施術前の聞き取り)を店主と同じ項目で進められるか、既存のお客様を何人か担当して仕上がりや時間に問題が出ていないか、といった基準です。基準を先に書いておき、満たしたらスタッフにも新規の方をお願いする、という順番にすると、任せる時期で迷いません。

運営:株式会社art crat./SALONA編集部
小規模・個人サロン、自費の治療院の経営・集客・ツール選びに、現場の手順で具体的に答えるメディアです。
公開日:2026-10-21/最終更新:2026-10-21
本記事の一部は、SALONA利用サロンへのヒアリングに基づき匿名化して掲載しています(発言そのままの引用ではなく、ヒアリングメモの要旨です)。

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