サロンの体験は1回?3回コース?回数の決め方と体験後のつなぎ方
サロンの体験は1回にする?3回コースにする?
サロンの体験を3回コースにするか、1回だけにするか。迷ったときの決め手は、値段の安さではありません。お客様が「自分に合うか」「通う感覚」をつかむのに、何回要るかです。そして、どちらにしても「体験のあとどうなるか」を先に決めておくことが、通い続けてもらう近道になります。
この記事でわかることは3つです。
- 1回体験と回数セットの体験の、向き不向き
- 体験のあとの料金を先に決める3つの型と、それぞれの伝え方
- 体験が効いているかを数える方法(セットの場合の数え方の注意つき)
結論:回数は「合うかどうかが分かるまでの回数」で決める
先に答えをお伝えします。
- 1回で分かる施術(仕上がりがその日に見えるもの)なら、体験は1回で足ります
- 数回通って分かるもの(体の使い方を覚える・習慣にする・間隔を空けて受ける)なら、2〜3回のセットのほうが判断しやすくなります
- どちらの場合も、体験のあとの料金と選択肢を、予約の前に書いておきます
体験の回数は、紙の予約表でもどの予約システムでも決められる「店の方針」です。ツールの機能から逆算して決めるものではありません。
体験のあとが続かないのは「その後」を決めていないから
体験メニューの悩みとしてよく挙がるのが、「体験には来てくれるのに、2回目につながらない」というものです。
その原因は、体験の中身よりも、体験が終わったあと、お客様が何を選べばいいのか分からないことにある場合があります。
- 次は通常料金なのか、回数券があるのか分からない
- 体験の最後に、その場で決めるよう言われそうで身構える
- 1回では、自分に合うかどうかまだ判断できない
1つめと2つめは「伝え方」、3つめは「回数の設計」の問題です。以下、この順で整理します。
1回体験と回数セットの体験を比べる
まず、2つの形の違いを表にします。
| 見るところ | 1回体験 | 回数セットの体験(例:3回) |
|---|---|---|
| 申し込みの気軽さ | 高い。1回なら試しやすい | 少し下がる。最初から数回の約束になる |
| 最初の支払い額 | 小さい | 回数分になるので大きめ |
| 他店と比べられて終わる心配 | 起きやすい。「体験だけ回る」方も来る | 起きにくい。数回通う前提の方が集まる |
| 通う感覚のつかみやすさ | 1回分しか分からない | 間隔を空けて通う感覚まで試せる |
| 店側の手間 | 体験のたびに、その後の案内が要る | 案内はセットの最後に1回でよい |
| 向く施術 | 仕上がりがその日に見えるもの | 回を重ねて自分に合うかを確かめるもの |
どちらが正しいという話ではありません。表のどの行を重く見るかで決まります。
たとえば、新規の方にとにかく一度来てほしい時期なら1回体験。体験だけで終わる方が多くて困っているなら、回数セットを試す価値があります。
1回体験に初回割引を付けている場合は、割引をいつまで続けるかも一緒に決めておきます。考え方はサロンの初回割引はいつやめる?クーポン価格を自社予約に移す決め方にまとめてあります。
体験のあとの料金を先に決める3つの型
回数を決めたら、次は「体験が終わったら、お客様は何を払うのか」を決めます。型は3つです。
型1:通常料金に戻る
体験は体験で終わり、次からは通常の1回料金です。いちばん分かりやすい形です。
体験の最後に伝えることは、「次回からは通常料金の◯◯です」の1点だけです。ただし、体験との差が大きいと「高くなった」と感じられやすくなります。
型2:通常の回数券に移る
体験のあと、店の通常の回数券を案内します。通う前提の方には自然な流れです。
体験の最後に伝えることは、回数券の枚数・1回あたりの金額・有効期限の3点です。期限の決め方は回数券の有効期限の決め方|サロンの繰り越しと失効のルールを参考にしてください。
型3:体験の続きとして、同じ条件で残りを受けられる
体験を「セットの1回目」と位置づけ、同じ単価のまま続けて受けられる形です。最初から回数セットで売る場合は、この型になります。
体験の最後に伝えることは、「残りは◯回で、◯月◯日まで使えます」の確認だけです。売り込みの場面がほぼ無くなります。
3つのうちどれを選ぶかで、体験の最後の会話がまるごと変わります。型を決めずに体験を始めると、最後の会話がその場の思いつきになり、お客様ごとに言うことがぶれます。
回数券の中身そのもの(初回だけ有料にする形など)は回数券「初回有料・2回目以降無料」をシステムで管理する方法にまとめてあります。
「最初から3回、みんな選んでくださって」
回数セットの体験が実際にどう選ばれているか。ピラティススタジオのオーナーAさん(仮名)からうかがった話です。
Aさんのスタジオでは、体験を「1回だけ」と「3回のセット」の2つから選べます。3回のセットは、1回だけの体験と同じ単価で3回受けられる設計です。1回だけにした方は、次回から通常料金か、通常の回数券になります。
ネット予約で申し込む方がどちらを選んでいるか、Aさんはこう話されていました。
もう最初から3回みんな選んでくださって
もう初回から、1枚使いますみたいな方ばっかりで
(ヒアリングに基づき匿名化し、話し言葉の表記を整えています。金額は伏せています)
もう1つ、Aさんの運用で参考になるのが、ネット予約に慣れていない方への対応です。オンラインでの予約が難しい年配の方は、Aさんが代わりに予約を入れます。そのうえで、来店されたときに「どうされますか」と相談して決めていただくそうです。
ここから読み取れることは2つあります。
- 体験のあとの条件が、予約の前に見えていること。1回だけを選んだ場合と3回を選んだ場合の違いが、申し込む時点で分かるので、お客様が自分で選べます
- 決める場面を、お客様に合わせて動かしていること。予約画面で選べる方はそこで、難しい方は来店してから。どちらでも、店がその場で押し切る形になっていません
Aさんの例は、回数セットが売れたという話というより、選ぶための材料を先に渡したら、お客様が自分で選んだという話として読むのが正確だと思います。
その場で即決を迫らない伝え方
体験の最後は、お客様がいちばん身構えている時間です。国民生活センターは2026年10月7日にパーソナルトレーニングに関する契約トラブルを公表しました。無料体験のあとに高額なコースを勧められてその場で契約した、長時間の勧誘を受けた、といった相談が増えていると報告されています。消費者へのアドバイスとして、その場で判断できないときは契約を急がないこと、契約条件をよく確認することが挙げられています。
業種は違っても、体験のあとに勧誘されるのではと身構えて来店されるお客様がいることは、想定しておいたほうがよいはずです。だからこそ、次の3つで「決めるのはお客様」という形を作っておきます。
- 予約の前に、体験後の料金と選択肢を書いておく。予約ページ・メニュー表・案内文のどこでもかまいません。体験の最後に初めて聞く話をなくします
- 体験の最後は「どうされますか」と聞き、持ち帰りも選べるようにする。「今日決めなくて大丈夫です。次の予約のときに教えてください」と添えます
- ネット予約が苦手な方は、店が予約を入れて来店時に相談する。予約の手間と、決める負担を一度に背負わせません
体験の最後に使える文面の例です。
今日はありがとうございました。続ける場合は、通常の1回料金か、回数券(◯回・1回あたり◯円・◯か月有効)のどちらかになります。今日決めていただかなくて大丈夫です。次にご予約いただくときに、どちらにされるか教えてください。
「今日だけ」「今決めれば」といった期限で背中を押す言い方は使いません。
体験の価格の見せ方と、法律で決まっていること
体験の設計には、法律が関わる場面が2つあります。以下は2026年10月に確認した内容です。自店が当たるかどうかは、契約の中身・金額・期間によって変わります。判断は専門家か所管の窓口にご相談ください。
1つめ:「通常◯円→体験◯円」と並べて見せる場合
通常の価格と体験の価格を並べて見せる表示を、二重価格表示といいます。消費者庁の二重価格表示のページでは、比べる価格として過去の販売価格を使うなら、最近相当期間にわたって実際に販売されていた価格であることが求められると説明されています。そう言えない価格を使うときは、いつ・どのくらいの期間販売していたかを正確に書く必要があります。実際には売っていない「通常価格」を並べるのは避けてください。
2つめ:まとまった回数・金額のコースにする場合
特定商取引法には、特定継続的役務提供という区分があります。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、対象はエステティック・美容医療・語学教室・家庭教師・学習塾・結婚相手紹介サービス・パソコン教室の7つの役務です。エステティックでは、期間が1か月を超え、金額が5万円を超える契約が対象とされています。
対象になると、契約前と契約後に決められた書面を渡す義務があり、書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフ(無条件で契約をやめられる制度)ができます。中途解約のルールも決まっています。
体験を入口にして長い・大きなコースへ案内する設計にするなら、自店の役務がこの7つに当たるか、期間と金額がどうかを一次資料で確認してください。対象の役務は法律で決まっているので、自店の業態がどこに入るかは自己判断で決めつけないことです。
体験は「売上」より「続けるかを決めてもらう時間」
ここまでの話を、1つの見方にまとめておきます。
体験メニューを売上の柱として見ると、単価を上げたくなったり、その場で次の契約まで決めてもらいたくなったりします。けれど体験の役割は、お客様に「この店に通うかどうか」を決めてもらうための時間です。
この見方に立つと、判断がぶれにくくなります。
- 回数は、決めるのに必要な回数にする
- 体験後の料金は、決めるための材料として先に見せる
- 体験の最後は、決めるのを手伝う会話にする(決めさせる会話にしない)
そして、通い続けた方からの売上は、体験の売上よりずっと大きくなります。体験で無理に取りに行かないほうが、結果として店に残るものは多いと考えています。
体験が効いているかを数える
体験の形を変えたら、効いているかを数えます。見るのは新規再来率です。新規のお客様のうち、2回目に来てくださった方の割合のことで、数え方は新規再来率とは?計算方法と何日で数えるか・少人数の店の読み方にまとめてあります。
数えるときの注意が1つあります。
- 1回体験の場合:体験のあと、2回目に来た方の割合を数えます
- 回数セットの体験の場合:セットの回数分は、来ていただいて当たり前です。見るのはセットを使い終えたあと、続けてくださった方の割合です
回数セットにした店が、体験直後の2回目の来店だけで数えると、数字が良く見えすぎます。セットの最後の来店日を起点に数え直してください。
少人数の店では、月ごとの割合は数人の違いで大きく揺れます。数か月分をまとめて、体験の形を変える前と後で比べるほうが読み違えません。
よくある失敗とNG
- 体験の回数を他店に合わせて決める。自店の施術で、合うかどうかが何回で分かるかから決めます
- 体験後の料金を、体験の最後に初めて伝える。お客様に「勧誘が始まった」と受け取られやすくなります。予約の前に書いておきます
- 体験の最後に、その場で決めるよう迫る。「今日だけ」「今決めれば」は使いません。持ち帰りを選べるようにします
- 回数セットの効き目を、2回目の来店で数える。セットの回数分は来て当たり前です。セットを終えたあとの継続で見ます
- 実際には売っていない「通常価格」と並べて体験価格を見せる。比べる価格は、実際に販売している価格にします
- 体験の案内で、結果を約束する。「◯回で変わる」のような書き方はしません。体験は「自分に合うか」を確かめる場として案内します
- 1回体験と回数セットの違いを、メニュー名だけで伝える。名前が似ていると、どれを選べばいいか迷います。回数と、終わったあとの料金まで書きます
業態別のメモ
- ピラティス・ヨガなどのスタジオ:体の使い方を覚えるまでに回数がかかるので、回数セットの体験と相性がよい業態です。月額制で通っていただく店は、体験から入会までの流れをサロンの月額会員|請求日の決め方と最初に決める3つの日付とあわせて設計してください
- エステ:回数とセットの金額しだいで、特定継続的役務提供の条件に関わることがあります。体験からコースへ案内する設計なら、期間と金額を先に確認してください
- 整体・鍼灸などの院:体験の案内では、回数・料金・通う間隔といった手続きの説明にとどめます。体の変化や施術の結果を約束する書き方はしません
- まつげ・ネイル・美容室:仕上がりがその日に見える施術が多く、1回体験で判断しやすい業態です。回数より、体験後の料金(型1か型2)を先に見せることに力を入れます
まとめ
体験メニューの回数は、次の順で決めます。
- お客様が「合うかどうか」を判断するのに何回要るかで、1回か回数セットかを決める
- 体験のあとの料金を3つの型から1つ選ぶ(通常料金に戻る/通常の回数券に移る/同じ条件で残りを受けられる)
- 体験後の料金と選択肢を、予約の前に書いておく
- 体験の最後は「どうされますか」と聞き、持ち帰りも選べるようにする
- 新規再来率で効き目を数える。回数セットはセットを終えたあとで見る
体験は、売り込む場ではなく、お客様に通うかどうかを決めてもらう時間です。紙のメニュー表に、体験の回数と、その後の料金を1行ずつ書き足すところから始められます。
体験メニューと回数券を予約のときからつなげるなら
体験の形が決まったら、予約の時点でその流れが見えていると、お客様は迷わずに選べます。SALONA(サローナ)では、メニューごとに予約できるお客様を新規・再来店・全員から選べます。初回体験メニューに回数券を紐づけておくと、その回数券をお持ちの方は2回目以降も同じ体験メニューから予約できます。回数券の残りの回数と有効期限は、お客様ご自身がマイページで確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q. サロンの体験メニューは、1回と3回コースのどちらがよいですか?
A. お客様が「自分に合うか」を判断するのに何回要るかで決めます。仕上がりがその日に見える施術なら1回で足ります。体の使い方を覚える、間隔を空けて通う感覚を確かめる、といった数回で分かるものなら、2〜3回のセットのほうが判断しやすくなります。どちらにしても、体験のあとの料金と選択肢を予約の前に書いておくことが大切です。
Q. 体験の最後に、回数券をどう案内すればいいですか?
A. 体験の最後に初めて伝えるのではなく、予約の前に体験後の料金と選択肢を書いておきます。そのうえで体験の最後は「どうされますか」と聞き、「今日決めなくて大丈夫です」と持ち帰りも選べるようにします。国民生活センターは、無料体験のあとにその場で高額なコースを契約させられる相談が増えていると注意を呼びかけています。「今日だけ」と期限で迫る言い方は避けてください。
Q. 体験を3回セットにした場合、効き目はどう数えればいいですか?
A. 新規再来率(新規のお客様のうち2回目に来た方の割合)で見ますが、セットの場合は数え方を変えます。セットの回数分は来ていただいて当たり前なので、体験直後の2回目で数えると良く見えすぎます。セットを使い終えたあと、続けてくださった方の割合を見てください。少人数の店では、数か月分をまとめて、形を変える前と後で比べると読み違えません。
運営:株式会社art crat./SALONA編集部
小規模・個人サロン、自費の治療院の経営・集客・ツール選びに、現場の手順で具体的に答えるメディアです。
公開日:2026-10-23/最終更新:2026-10-23
本記事の一部は、SALONA利用サロンへのヒアリングに基づき匿名化して掲載しています。
参照:独立行政法人国民生活センター「パーソナルトレーニングに関する契約トラブル」(2026年10月7日)/消費者庁「特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供」/消費者庁「二重価格表示」(いずれも2026年10月確認)