リピート・固定客づくり

美容室・サロンの迷惑な客の断り方|4段階の線引きと伝え方

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美容室・サロンで迷惑な客の断り方を決めるとき、先に決めるのは「基準」

特定のお客様への対応に限界を感じたとき、迷うのは「断っていいのか」ではなく、どこで線を引き、どう伝えるかです。ひとりで営業していると、その場に相談相手がいません。この記事でわかることは3つです。(1)「断る」を4段階に分けて、いきなり最後まで飛ばさない考え方、(2)感情ではなく起きた事実の回数で線を引く4つの観点、(3)そのまま使える伝え方の文面3本と、断ったあとの備えです。紙の台帳と電話予約だけの店でも、今日から実行できます。

結論:段階を4つに分け、観点ごとに「何回で上げるか」を先に決める

先に答えをお伝えします。断る判断がつらいのは、心が弱いからではありません。「受ける」と「今後いっさい受けない」の2つしか選択肢を持っていないからです。その2つの間には距離がありすぎて、どちらにも踏み出せません。

やることは3つです。

  1. 段階を4つに分ける。①その場で伝えて様子を見る ②条件をつけて受ける ③新規の予約受付だけ止める ④今後お受けしない。
  2. 観点ごとに「何回で次の段階へ上げるか」を、平常時に数字で決めておく。安全に関わることだけは1回で判断してよい、という例外も先に決めます。
  3. 決めた基準に沿って、短く伝える。理由を並べず、主語を「うちの店では」にします。

この3つを、お客様が目の前にいない時間に紙1枚で決めておきます。当日やるのは、決めた紙を読み上げることだけになります。

なお、遅刻や無断キャンセルそのものへの対応は「行為ごとのルール」の話です。この記事が扱うのは、そのお客様をこれ以上お受けしないかどうかという、判断そのものです。役割が違うので、混ぜずに別々に決めます。

決められないのは、優しさではなく基準がないから

「断れない自分が悪い」と考える必要はありません。決められない理由は、たいてい構造の側にあります。

  • 選択肢が2つしかない。受けるか、出入りをお断りするか。その中間を持っていないので、どちらも選べず先送りになります。
  • 判断の材料が記憶しかない。「前も遅れた気がする」では、伝えるときの根拠になりません。曖昧なまま伝えると、話が「事実の確認」ではなく「印象の言い合い」になります。
  • その場でしか考えていない。目の前に人がいる状態で、受けるかどうか・料金をどうするか・次回をどうするかを同時に解こうとしています。落ち着いて判断できる条件ではありません。
  • 逃げ場がない。ひとりで営業していると、間に入る人も、代わりに対応する人もいません。受け止めた分がそのまま自分に残ります。
  • 売上が減るのが怖い。1人失うことの損失は、金額で見えます。一方で、そのお客様を受け続けることの損失は数字に出ません。

最後の点は、あとで数字にして見ていきます。まずは、中間の選択肢を作るところからです。

「断る」は4段階に分かれている

いきなり「今後お受けしません」に飛ぶ必要はありません。実務では、次の4段階を順に使います。

段階何をするか使う場面相手への伝わり方
① その場で伝えて様子を見る起きたことを1回だけ言葉にし、次回どうなるかを添える初回・程度が軽い注意ではなく確認として伝わる
② 条件をつけて受ける内容・時間帯・支払い方法のどれかを限定して受ける繰り返しているが関係は続けたい断られたのではなく条件が変わった
③ 新規の予約受付だけ止めるすでに入っている予約は受け、次からの申し込みを受けない改善が見られない静かに離れられる
④ 今後お受けしない以降の予約を受けない意思をはっきり伝える安全に関わる/③でも続く明確な終わり

大事なのは、段階ごとに「次に同じことが起きたらどうするか」を先に決めておくことです。①で伝えるときに、自分の中では②の内容が決まっている。②で受けるときに、③に上げる回数が決まっている。この状態を作っておくと、次に同じことが起きても、その場で考え直さずに済みます。

②の「条件をつけて受ける」は、①と④のあいだを埋める中心の段階です。具体的には、こう限定します。

  • 内容を限定する:やり直しや相談を含まない、範囲のはっきりしたメニューだけをお受けする。
  • 時間帯を限定する:他のお客様と重ならない時間、あるいは自分に余裕のある時間だけをお受けする。
  • 支払い方法を限定する:先にお支払いいただく形に切り替える。無断キャンセルや当日キャンセルが続いている場合の定番です。
  • 予約方法を限定する:オンラインでの申し込みではなく、電話や来店時の対面でのみ次回をお受けする。

④まで行った場合でも、伝えるのは「今後のご予約はお受けできません」という自店の方針までです。それ以上のこと、たとえば店舗への立ち入りをどこまで制限できるかといった話は、状況によって扱いが変わります。踏み込む必要が出たときは、弁護士など専門家に相談してください。

線引きは感情ではなく、起きた事実の回数で引く

段階を分けたら、次は「どうなったら上げるか」です。ここを気分で決めると、その日の体調で結論が変わります。見るのは次の4つの観点です。

① 安全(身体・言葉)
 体に触れる、大きな声を出す、人格を否定する言葉を投げる。ここは回数を数えません。1回で③または④に上げてよい、と先に決めておきます。数える対象にしてしまうと、2回目を待つことになります。

② 他のお客様への影響
 居合わせた方が不快な思いをした、怖い思いをした、予定の時間が押した。自分ひとりが我慢すれば済む話ではなくなった時点で、観点が変わります。

③ 時間とお金の実損
 遅刻、当日キャンセル、無断キャンセルが何回続いたか。ここは数えられます。金額でも数えられます。

④ 要求が施術の範囲を超えているか
 無償でのやり直しを繰り返し求められる、営業時間外に連絡が来る、料金表にない対応を前提にされる。1回ごとは小さくても、積み重なると営業時間そのものを削ります。

そのうえで、観点ごとに「何回で次の段階へ上げるか」を自分で決めます。ここが記事の核です。下は書き方の見本で、業界の目安ではありません。自店の予約の入り方と、耐えられる範囲で数字を入れ替えてください。

観点① で伝える② 条件をつける③ 新規受付を止める④ 今後お受けしない
安全に関わること1回1回(程度による)
他のお客様への影響1回目2回目3回目
無断キャンセル1回目2回目3回目
当日キャンセル・遅刻2回目3回目5回目
範囲を超えた要求1回目2回目4回目

数字を先に置くことの意味は2つあります。ひとつは、上げる判断が「自分の感情」から「表の参照」に変わること。もうひとつは、下げ止まりができることです。今日は虫の居所が悪いから断る、ということが起きなくなります。基準は、厳しくするためではなく、ぶれないために作ります。

回数の数え方そのもの(遅刻を何分から数えるか、当日キャンセルの範囲をどこまでとするか)は、行為ごとのルールの側で決めます。美容室・サロンの遅刻は何分まで受ける?店側の対応ルールの決め方個人サロンの無断キャンセル対策|リマインドと文例で防ぐにまとめてあります。

先延ばしにするほど高くつく、という見方

断る判断を先送りにすると、失われるのは「気分」だけではありません。枠と、営業意欲です。ここは数字にできます。

たとえば、無断キャンセルが月1回あるお客様がいるとします。1枠90分、その時間に別の方をお迎えできていれば得られたはずの金額を1万円とします。年に12回で12万円。ここまでは誰でも計算します。

見落とされるのはその先です。

  • 前後の枠まで沈む。当日に空いた90分が、直前に別のご予約で埋まるとは限りません。前後の準備や移動を含めれば、実際に失うのはその1枠だけではありません。
  • 来店当日の集中力が落ちる。「今日はあの方だ」と思いながら迎える日は、朝から気が重くなります。同じ日に来店される他のお客様への対応も、そのぶん薄くなります。
  • 判断のコストが毎回かかる。予約が入るたびに「今回は受けるか」を考え直すこと自体が、営業時間外の時間を削ります。
  • 他のお客様の枠を先に埋めている。人気の時間帯を押さえられていると、通ってくださる方が予約を取れない状態になります。失っているのは1人ぶんの売上ではなく、その枠に入れたはずの誰かです。

ひとりで営業している店は、この負担を分散できません。スタッフのいる店なら担当を替えるという逃げ道がありますが、ひとり営業には替わる人がいません。だから、大手より早めに線を引くほうが、結果として他のお客様には親切という逆転が起きます。厳しさではなく、営業を続けるための設計です。

なお、人気の時間帯が特定の方に押さえられ続ける構造そのものについては、通い放題・月額制サロンの予約ルールの決め方|枠の先取りを防ぐで扱っています。

決める前に、4項目だけの記録を残す

段階を上げる前に、記録を作ります。ひとり営業ほど、判断の根拠が記憶に寄りがちだからです。記憶は、都合よくも、都合悪くも変形します。

書くのは4項目だけです。予約台帳の余白でも、手帳でも構いません。

  1. 日付
  2. 何が起きたか(事実のみ)
  3. 何回目か
  4. 自分がどう対応したか

コツは、感情語を書かないことです。「態度が悪い」ではなく「開始時刻に30分遅れて来店。短縮の提案を断られた」と書きます。「しつこい」ではなく「施術後、料金表にないやり直しを2度求められた」と書きます。

事実だけで書く理由は2つあります。

ひとつは、伝えるときにそのまま使えるからです。「いつも遅れますよね」は反論されますが、「6月10日、7月2日、8月5日に30分以上遅れてお越しになっています」は反論の余地が小さくなります。もうひとつは、自分への歯止めになるからです。書き出してみると「思ったより回数は少なかった」と気づくことがあります。逆に、記憶より多いこともあります。どちらにしても、感情ではなく事実で判断できます。

記録は、お客様に見せるためのものではありません。自分が迷わないためのものです。

角を立てずに伝える型と、そのまま使える文面3本

伝え方には型があります。守るのは4つです。

  1. 主語を店にする。「あなたが悪い」ではなく「うちの店では受けられない」。人格の話にしないための、いちばん大きな工夫です。
  2. 理由は短く1つだけ。複数並べると、ひとつずつ反論されます。反論の的を増やさないために、いちばん動かない理由を1つだけ言います。
  3. 謝罪と方針を混ぜない。「申し訳ありません」を重ねると、方針が交渉の余地に見えます。お詫びは1回、方針は言い切りの形で。
  4. その場か、後日の文面かを選ぶ。安全に関わる場面では、その場では引かずに終わらせ、記録して後日文面で伝えるのが原則です。文面は、記録が残り、こちらが落ち着いた言葉を選べます。

以下は、そのまま使える文面です。自店の言葉に置き換えてお使いください。

(a) 当日、その場で施術を打ち切る

申し訳ありませんが、本日はここまでとさせていただきます。うちの店では、こうした状態でお続けすることができません。本日の分のお会計は◯◯円です。お手数ですが、お会計をお願いいたします。

ポイントは、理由を説明しないことです。その場で理由を述べると議論が始まります。事実の確認は後日の文面に回します。

(b) 次回以降の予約をお受けしないと伝える(後日・文面)

◯◯様
いつもご利用いただきありがとうございます。
大変申し訳ございませんが、今後のご予約につきましては、お受けすることが難しい状況です。当店は私ひとりで対応しており、ご希望に沿ったご案内ができないためです。
勝手を申し上げますが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。

理由を「ひとりで対応しているため、ご希望に沿えない」に一本化しています。相手の行為を責める言葉が入っていません。それでも、方針は動かないことが伝わります。

(c) 予約の連絡が来たときに断る

ご連絡ありがとうございます。申し訳ありませんが、ただいま新規のご予約をお受けしておりません。ご希望に沿えず申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。

③の段階(新規の受付だけ止める)で使う形です。個別の事情に触れていないので、角が立ちません。ただし、他の方の予約は受けている状態なので、口頭で「今は受けていない」と言い切る形にはしないほうが無難です。「◯◯様のご予約は」と限定せず、この文面のまま短く返します。

伝えたあとは、返信を待たないことです。返信への返信を重ねるほど、方針は交渉に見えます。1往復で終える前提で書きます。

2026年10月から始まる「カスハラ対策の義務」は、ひとりサロンにどう関係するか

ここは、制度の話です。断る基準を作るうえで、外の物差しがあると心強くなります。

2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)で、事業主にカスタマーハラスメント対策が義務づけられました。具体的な内容を定めた指針(令和8年厚生労働省告示第51号)は2026年2月26日に告示され、2026年10月1日から施行されます(厚生労働省の該当ページで2026年8月時点に確認)。

まず、範囲をはっきりさせます。

  • この措置義務の対象は、労働者を雇っている事業主です。業種や規模による例外、中小企業向けの猶予期間は設けられていません。
  • したがって、スタッフを雇わずひとりで営業している店は、この措置義務の直接の対象にはなりません。「サロンにも義務化された」という言い方は、ここを飛ばしています。
  • 逆に、アルバイトやパートを1人でも雇っているなら、対象です。将来スタッフを入れる予定があるなら、今のうちに形を作っておくと移行が楽になります。

そのうえで、指針が事業主に求めている措置の柱は、おおむね次の5つです。

  1. 方針を明確にし、働く人に周知すること
  2. 相談・苦情に対応する体制を整えること
  3. 起きたことについて事実関係を確認し、適正に対処すること
  4. 相談した人のプライバシーを守り、相談を理由に不利益に扱わないと周知すること
  5. 職場環境を改善するための取り組みを行うこと

注目したいのは、この5つが、雇用の有無に関係なく使える形をしていることです。ひとりサロン向けに読み替えると、こうなります。

  • 「方針の明確化」→ この記事の4段階と回数の表。自分ひとりでも、方針を紙にする意味は同じです。
  • 「相談体制」→ ひとりの店に社内相談窓口はありません。代わりに、困ったときに相談する先を先に決めておく(同業の知り合い、加入している商工会議所や組合の相談窓口、各都道府県の労働局の総合労働相談コーナー、弁護士)ことが、これにあたります。
  • 「事実関係の確認」→ 先ほどの4項目の記録。制度の側も、判断の前に事実を確認せよ、と言っています。
  • 「不利益取扱いの禁止」→ ひとりの店では、自分を責めないこと、と読み替えられます。
  • 「職場環境の改善」→ 予約時の案内や受付の条件を見直すこと。

制度として国が「顧客からの著しい迷惑行為には、事業主が対処すべきものがある」という前提に立った、という事実は、義務の対象でなくても使えます。断ることは、わがままではなく、事業の運営として想定されている——それが、この改正のいちばん実務で使える部分です。

断ったあとに起きることへの備え

伝えて終わり、にはなりません。あとに起きうることを3つ、先に決めておきます。

① 口コミやSNSに書かれたとき

返信の原則は3つです。事実だけを短く/個別の来店内容に触れない/言い返さない

書かれた内容が事実と違っていても、公開の場で経緯を説明すると、来店内容という個人の情報を店側から出すことになります。読む人に伝わるのは、内容の正しさよりも返信の書きぶりのほうだと考えて書きます。落ち着いた1〜2行で終えるほうが、長い反論より伝わるはずです。

ご意見をいただきありがとうございます。ご期待に沿えず申し訳ございませんでした。いただいた内容は今後の運営に生かしてまいります。

削除を求めるかどうか、法的な対応を取るかどうかは、内容と状況によって扱いが変わります。ここは自己判断せず、専門家に相談する場面です。

② 別の名前や連絡先で予約が入り直る

これは起こりうることです。名前も電話番号も変えて申し込まれると、店側からは新規のお客様に見えます。どんな仕組みを使っていても起こりうることなので、防ぐ側ではなく、来店時に気づく側で備えます。

  • 新規の方の予約が入ったら、予約時のメモや希望内容に、見覚えのある言い回しがないかを見ます。
  • 来店時、施術に入る前にお顔を確認できる動線を作っておきます。受付を挟まずいきなり施術に入る流れだと、気づく機会がありません。
  • 気づいた場合の言い方を先に決めておきます。前掲の (a) の形が使えます。

③ 常連さんや紹介元にどう説明するか

紹介で来られた方だった場合、紹介元との関係が気になります。原則は、こちらから経緯を説明しないことです。第三者に来店内容を話すのは、個人の情報の扱いとして避けたい形です。

尋ねられたときの答えを1つだけ用意しておきます。

事情がありまして、今はご予約をお受けしていないんです。ご紹介いただいたのに、申し訳ありません。

理由を言わないことに後ろめたさを感じるかもしれませんが、言わないことがお客様の情報を守ることでもあります。それ以上を尋ねられても、答えはこの1つで通します。

そもそも段階を上げずに済ませるために

もっとも負担が小さいのは、予約を受ける前に条件を示しておくことです。あとから持ち出す条件は、説明ではなく後出しになります。

先に示しておくのは3つです。

  • 遅刻の扱い(何分まで受けるか、超えたらどうするか)
  • キャンセルの扱い(いつまでに連絡が要るか、連絡なく来られなかった場合どうするか)
  • やり直しの範囲(何を無償で承り、どこからが有償か)

置き場所は、予約を申し込む前に読める場所です。申込後の完了画面や確認メールで初めて条件が出てくる形は、事前に示したことになりません。文面の具体例と置き場所は、前掲の遅刻と無断キャンセルの記事に詳しくまとめてあります。ここでは深追いしません。

条件を示しておくと、段階を上げる場面でも会話が楽になります。「うちの店ではこうお伝えしています」と、書いてあるものを指せるからです。

よくある失敗

  • ①を飛ばして④に行く。限界まで我慢してから一気に断ると、相手には唐突に映ります。段階を踏んでいれば、相手にも心当たりが残ります。
  • 回数を決めずに「次はない」と思う。頭の中の「次はない」は、実際にはもう1回、もう1回と伸びます。数字を紙に書いて初めて止まります。
  • 理由を丁寧に説明しすぎる。誠実さのつもりで理由を3つ並べると、3つとも反論の的になります。1つに絞るほうが、結果として話が短く終わります。
  • その場で決着をつけようとする。安全に関わる場面ほど、その場での決着は難しくなります。いったん終わらせ、記録し、後日文面にするほうが安全です。
  • 常連だから、という理由で例外にする。例外はその方にとっての新しい基準になります。長く通ってくださっている方ほどルールの外にいる、という状態ができます。
  • 記録に感情語で書く。「感じが悪い」は、あとから読んでも根拠になりません。日付と行為と回数だけを書きます。
  • 他のお客様に事情を話す。共感してもらいたくなりますが、来店内容を第三者に話すのは避けたい形です。相談先は店の外に持ちます。
  • 断ったあとに連絡を重ねる。返信への返信が増えるほど、方針が交渉に見えます。1往復で終える設計にします。
  • 予約の受け方を変えないまま断る。オンラインから申し込みが入り続ける状態のまま「今後お受けしません」と伝えると、次の申し込みに毎回向き合うことになります。受付の側も同時に変えます。

業態別の差分メモ

  • 美容室:会話の時間が長く、関係が近くなりやすい業態です。そのぶん、②の「条件をつけて受ける」が使いやすい業態です。指名や時間帯を限定する形なら、関係を切らずに距離を作れます。工程の途中で打ち切りにくいので、受けるかどうかの判断は、薬剤を使う工程に入る前に済ませます。
  • まつげエクステ・ネイル:施術中はお客様が目を閉じている、手が使えないなど、こちらから動きにくい状態が続きます。その場で打ち切る判断は現実的に難しいので、当日は最後まで行い、後日の文面で伝える形(前掲の (b))を基本にしておくと、当日の負担が減ります。
  • エステ・脱毛など設備を使う施術:無断キャンセルの実損が、人の時間だけでなく設備の稼働にも及びます。実損を数える観点で、設備が空いた時間もあわせて記録しておくと、段階を上げる判断がしやすくなります。
  • 自費の整体・鍼灸・整骨院など:ここで扱うのは、予約と料金と連絡方法という運用の条件だけにとどめます。断る理由や案内文の中で、体調の変化や施術の結果に触れる表現は使いません。なお、厚生労働省のあはき・柔整広告ガイドライン(2025年2月18日)では、院のホームページ自体は原則として広告規制の対象外とされる一方、リスティング広告やSNSへの投稿は広告として扱われ、広告にあたらないホームページにも虚偽・誇大な内容を載せないことが求められています。予約前の注意書きを書くときも、書く範囲は時間・料金・連絡方法の条件にとどめるのが安全です。

まとめ

断る判断がつらいのは、「受ける」と「今後いっさい受けない」の2つしか持っていないからでした。

やることは3つです。(1)段階を4つに分ける。その場で伝える/条件をつけて受ける/新規の受付だけ止める/今後お受けしない。②の「条件をつけて受ける」が、①と④のあいだを埋める中心の段階です。(2)観点ごとに、何回で次の段階へ上げるかを平常時に決める。安全に関わることだけは1回で判断してよい、と先に決めます。(3)決める前に、日付・何が起きたか・何回目か・自分の対応の4項目を、感情語を使わずに記録する。

伝えるときは、主語を店にして、理由は1つだけ、1往復で終える。断ったあとは、口コミへの返信の原則、別の名前で予約が入り直ったときの見分け方、紹介元への答え方を、それぞれ1つずつ用意しておきます。

2026年10月から始まるカスタマーハラスメント対策の義務は、スタッフを雇っていない店には直接かかりません。それでも、方針を決め、事実を記録し、相談先を持つという柱は、ひとりの店でもそのまま使えます。断ることは、事業の運営として想定されている——その前提に立てると、判断は少し軽くなります。

紙とペンで30分あれば、4段階と回数の表は作れます。次に同じことが起きた日に、その紙を開くだけで済みます。

決めた基準を、角を立てずに運用するなら

紙で決めた基準も、オンラインから申し込みが入り続ければ、そのたびに向き合うことになります。SALONA(サローナ)では、顧客カルテごとに、Web・LINEからのオンライン予約をお受けしない設定にできます。理由は店内のメモとして残り、お客様側には表示されません。カルテにはキャンセルと無断キャンセルの回数も並ぶので、決めた回数と照らして判断できます。ただし別のお名前や連絡先で申し込まれた場合は新規のお客様として扱われるので、来店時に気づく動線はあわせて用意してください。

顧客カルテと予約受付まわりをSALONAで見てみる →

よくある質問(FAQ)

Q. 特定のお客様の予約を、店の判断でお断りしてもよいのでしょうか。
A. どのお客様のご予約をお受けするかは、店側が決められる範囲の話です。ただし、伝え方や、どこまでの制限が認められるかは、状況によって扱いが変わります。実務としておすすめしたいのは、いきなり「今後いっさいお受けしない」に飛ばず、その場で伝える/条件をつけて受ける/新規の受付だけ止める/今後お受けしない、の4段階を順に使うことです。あわせて、日付・起きたこと・何回目か・自分の対応の4項目を、感情語を使わずに記録しておきます。金額の請求や、立ち入りをどこまで制限できるかといった法的な判断が必要な場面では、弁護士など専門家にご相談ください。

Q. 断ったあとに悪い口コミを書かれたら、どう返信すればよいですか。
A. 原則は3つです。事実だけを短く書く、個別の来店内容には触れない、言い返さない。内容が事実と違っていても、公開の場で経緯を説明すると、お客様の来店内容を店側から出すことになります。読む人に伝わるのは、内容の正しさよりも返信の書きぶりのほうだと考えて書きます。「ご意見をいただきありがとうございます。ご期待に沿えず申し訳ございませんでした」といった1〜2行で終えるほうが、長い反論より落ち着いて見えるはずです。削除を求めるかどうか、法的な対応を取るかどうかは内容によりますので、判断が要る場面は専門家にご相談ください。

Q. 2026年10月から始まるカスハラ対策の義務は、ひとりで営業しているサロンも対象ですか。
A. この措置義務の対象は、労働者を雇っている事業主です。スタッフを雇わずおひとりで営業している場合、直接の対象にはなりません。アルバイトやパートを1人でも雇っているなら対象で、業種や規模による例外、中小企業向けの猶予期間は設けられていません(令和8年厚生労働省告示第51号/2026年10月1日施行・2026年8月時点で確認)。ただし、指針が挙げる柱——方針を決めて示す、相談できる先を持つ、事実関係を確認する、環境を見直す——は、雇用の有無に関係なく使える形をしています。将来スタッフを入れる予定があるなら、今のうちに紙にしておくと移行が楽になります。

運営: 株式会社art crat./SALONA編集部
公開日: 2026-08-28 最終更新: 2026-08-28
本記事にお客様の声(ヒアリング)の引用はありません。制度に関する記述は、下記の一次情報を2026年8月時点で確認したうえで、実務の手順に読み替えたものです。
参照: 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針/令和8年厚生労働省告示第51号・2026年2月26日告示・2026年10月1日施行)/厚生労働省「あはき・柔整広告ガイドライン」(2025年2月18日)|いずれも2026年8月時点で確認

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